日刊ゲンダイ 2015年3月11日
安倍首相も“疑惑の総合商社” 下村大臣と同じ構図のカネ集め
「辞めちゃダメだ」――。先週3日夜、首相公邸で安倍首相は辞意を漏らした下村文科相を強く慰留したという。下村大臣は無届けの後援組織「博友会」をめぐる違法献金疑惑で連日、火の車。安倍首相の必死の慰留には「辞任ドミノ」回避のほか、自身の疑惑を蒸し返されたくないという意図もあったのではないか。実は安倍首相も盟友の下村大臣と同様の疑惑を抱えていた。“疑惑の総合商社”の称号は安倍首相にこそふさわしい。
「議員会館の安倍事務所を訪ね、政策秘書を通じて国交省に“耐震偽装は国の責任だ”と認めるように電話で圧力をかけたのではないか」
06年1月17日の国会証人喚問で、民主党の馬淵澄夫氏に追及されたのは、のちに耐震偽装事件で有罪判決を受けた小嶋進・ヒューザー社長だ。
小嶋氏は安倍事務所への陳情を認め、「政策秘書に相談した」と証言。安倍首相側は、国交省の耐震偽装公表当日に政策秘書と小嶋氏の面会は認めたが、国交省への働きかけは否定してみせた。
事件当時、安倍首相は小泉政権の官房長官。小泉政権は耐震偽装マンションの住民救済を名目に公的資金を投入した。小嶋氏と安倍事務所を結びつけたのは安倍首相の姓名をもじった「安晋会」なる後援組織だ。小嶋氏はその会員だったと証言したが、この口利き疑惑を当時メディアは黙殺した。
証人喚問前日、東京地検特捜部が突然ライブドアを強制捜査。安倍首相の疑惑はホリエモンの逮捕劇にカキ消されたのだ。
「安晋会にはライブドア事件の渦中に沖縄で怪死したエイチ・アイ・エス証券の野口英昭副社長(当時)も理事として名を連ねていました。07年に耐震偽装が発覚したアパグループの元谷外志雄代表や、09年に破産した折口雅博・元グッドウィル会長などもメンバーでした」(政界関係者)
よくもまあ、いわくつきの面々が安倍首相に群がったものだが、安倍首相本人は安晋会について「親睦団体で私の後援会ではない」とかつて国会で説明。この文句は下村大臣の「博友会」の言い訳と符合するが、不透明なカネの流れまで似ている。
安倍首相が48歳で幹事長に抜擢された直後の03年12月、安晋会主催の就任パーティーが東京・パレスホテルで開かれた。
「当時の報道によると、チケットには『政治資金パーティ』との記載があり、定員800人の会場は立錐の余地もないほど。主賓の安倍さんの挨拶に続き、20人あまりの財界人が登壇、安晋会の役員として紹介されたそうです。会費は1人2万円、少なくとも1600万円の資金を集めたはずです」(野党関係者)
ところが、安晋会は政治団体としての届け出がなく、パーティー収入の使途は一切、不明。判明した事実は、安晋会の代表幹事がパーティー直前に政治団体を設立。この政治団体がパーティー後に2回に分け、計136万円を献金した旨が、安倍首相の資金管理団体の収支報告書に記載されていたこと。一方、政治団体側は収支報告書を一度も届けず、すでに政治団体の資格を失ったことだ。
献金を差し引いても1000万円以上のパーティー収入は余ったはずだが、どこに消えたのかは謎のまま。政治団体の届け出のない後援組織の集めたカネがウヤムヤになる構図は、下村大臣の疑惑とソックリだ。安倍首相は補助金交付1年以内の企業からの違法献金が見つかったほか、政治資金でガリガリ君を買うなど、まさに疑惑の総合商社。いや「疑惑の一大コンツェルン」と言うべきか。