平塚市では自治体としては全国初となる「平塚市民のこころと命を守る条例」が制定されました。この条例は、自殺対策を総合的に推進し、自殺防止や自殺者の親族の方々を支援するとともに、市民が健康で生きがいをもって暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的としています。
日本の自殺者は10年連続して3万人を超えています。遺族からの聞き取り調査によると、自殺に至った理由は複数あった人がほとんどで、失業・借金・生活苦・離婚・アルコール依存・犯罪・精神的悩みなど、平均4つの原因が重なった末自殺に追い込まれていることがわかりました。
自殺の増加の背景には、1997年からの中小・零細企業の破たん・倒産、失業などが大きく影響しているとも言われています。
その後の小泉自公政権では、大企業には優遇、不況・倒産にあえぐ国民にはさらなる「痛み」を押しつけ、貧困と格差はさらに広がりました。規制緩和による非正規雇用の拡大、投機マネーによる物価の高騰は、ますます国民の命を危険にさらしています。
「自殺を防ぐ」には、こうした根本原因を取り除くこと、政治の中身を根本から変えることが何より重要であることは言うまでもありません。
この条例施行によって、平塚市は、相談者が訪れたら総合的に対応できるシステムづくりを進めるとしています。平塚保険福祉事務所との連携や、市民への啓発に取り組むとともに、多重債務専門の相談窓口を設置し、確実に認定司法書士等につなぐことで問題解決に導いていけるとしています。
しかし、自殺防止には、その時だけの相談で終わるのでなく、多重債務で苦しみ精神的に落ち込んでいる相談者には、積極的に連絡を取るなど問題解決まで見届ける支援が必要だと思います。
最近報告された「自殺実態白書」によると、自殺した人のうち相談機関に行っていた人は全体の72%。そのうち「最後の相談」の時期は、1か月~2週間前が18%、2週間~3日前という人が28%、亡くなる3日以内が8%、当日が8%となっています。
亡くなる1か月以内に相談に来た人が62%にもなっていることからも、「何とか生きたい」と藁をもすがる思いで相談に来たことがうかがえます。
今年度の自殺防止対策の予算は90万円。啓発のための横断幕、映画の上映やパンフレットなどに使われることになっています。
平塚市では、9月から専門の認定司法書士の方が月に1回相談に乗ってくださっていますが、こうした窓口を増やすだけでなく、「自殺防止条例」を活きたものにしていくためには、相談者としっかり向き合う行政側の姿勢とその人に最後までかかわる体制を市民と協力して作っていくことが不可欠です。