逆戻りさせないために
加藤 桝治
日本本土がはじめて空襲された1942年(昭和17年)4月18日、私が働いていた工場に爆弾が落とされ、15人の仲間が死にました。帰るとき、会社から「軍からの指示」だとして、「被害の内容は家族にも話すな」ときつく言われました。当日、軍司令部の発表は、1機も墜さないのに「敵機9機撃墜、わが方の被害は軽微」でした。こうして国民の目をふさぎ、口をふさぎ、耳をふさいで、うそをついて国民を戦争に駆り立てたのです。
いま、これと同じことが繰り返されようとしています。
「秘密保護法」のことです。
恐ろしいのは、「何が秘密かが秘密です」。厚木基地から飛び立った飛行機を撮ってブログに載せただけで警察に逮捕されかねません。 原発の調査に出かけ施設を写真に撮ったら、「テロの防止」ということで処罰されることもあるでしょう。秘密を知ろうとした人だけでなく「情報を公開しろ」と訴えたら、そのことが犯罪とされかねません。ジャーナリストの取材も制限され「真実」を知ることができなくなります。
安倍内閣がこの法案の成立を急ぐのは、日本をアメリカとともに「海外で戦争をする国」に造り替えようとしているからです。11月26日衆議院で強行採決しましたが国民の多数は反対しています。労働組合、民主団体、法曹界、学界、日本ペンクラブ、テレビキャスタ―、演劇界、新聞の多くが反対の声をあげています。もっと広がり大きな声になれば阻止することはできるでしょう。私たちも、声をあげ、意思を示しましょう。昔、通った道への「逆戻りは絶対にさせない」ために。
〈絵は、友人の漫画家・岡部有克さんが描いてくれました〉