平塚市では、障がい児の介助員を市の幼稚園・小中学校の特別支援教室や養護学校に派遣しています。週30時間働き、他の非正規の職員と同じ1時間830円。1年ごとの契約で1人5年まで継続できるというものです。市が派遣している介助員は55人。
この介助員の仕事は、養護学校に通う生徒をマイクロバスで送迎する添乗や、各市立幼稚園・小中学校で授業中、先生だけでは対応できない身体の介助や学習サポートなど細部にわたっています。
本来市や県がしっかりと障がい児教育に予算をつけて職員を配置しなければならないのに、「有償ボランティア」として安い予算で配置しているということが、今回の問題の根底にあります。
実は、今回示された来年度の介助員募集はいままで週30時間だった介助員の仕事を19.5時間または19時間とし、賃金(報酬)は1時間ではなく30分単位で計算して支払う、募集の年齢は問わないという内容のものでした。
養護学校や幼稚園・学校に子供が通っている保護者にとっても教師にとっても、本当にありがたい「なくてはならない」介助員です。それが1日6時間支援してもらえたのが4時間未満の支援となり、その収入も減らされる。時間が短縮された分をどう補ってもらえるのか、不安だらけです。
なぜ、こんなことになったのか?
昨年の「雇用保険法」の改定によって、週20時間以上働くものには事業者は「雇用保険」をかけなくてはいけなくなったからです。
近年、短期労働者、非正規で働く人が多くなり、離職しても保障がないためそうした人を支援するために国が法改正をしたのです。(本来、国は早急に労働者派遣法を抜本改正すべきなのですが)
「有償ボランティア」として雇っていたのに、雇用保険までかけることになっては大変。現場にとっては痛手だが、法に引っかからない20時間未満にするしかない。しかも、こんな短時間では来てくれる人が限られるから「年齢制限」を取り払おうというわけです。
有償ボランティア・・・!?
「有償ボランティア」という言葉を聞いたとき、一瞬目の前がくらくらする思いでした。これは労基法を危うくしないか?・・・こわい言葉だな・・・と。
「ボランティアで行っているけれど、お小遣い程度いただけてありがたい。」という意識できっと応募して下さる方が多いのでしょう。
本当に自分の人生、または時間を有効に過ごし、人のために役立ちたいという気持ちは貴重であり大切なことでそれ事態を否定するのではありません。その仕事が本当に自分の意思で動け、行かれる日だけお手伝いする内容かどうかが問題です。
「有償ボランティア」をネットで調べてみると労働と見るのか、ボランティアと見るのか非常にグレーな部分が多いと多くが指摘しています。
これが蔓延(はびこ)ったら、労働市場に混乱をきたすとも・・。
この介助員は、障がいを持った子供たちに親身になって支援する「自発的」な行動であるとともに、そこに行ったら、時間に拘束され、やるべき仕事が決まっている、自由な行動はできないもので、これを「労働ではない」と言えるのかが問われます。
募集の中には、仕事で知り得た情報を漏らさない「秘守義務」の厳守、「仕事を退職してからも同様」とされています。子どもの命にも関わる大切な仕事です。
介助員は「ボランティア」では済まない必要不可欠な人員
毎日勤務する介助員がボランティアで、各学校に配置されているサンサン・スタッフ(学習支援補助員)は1ヵ月12日の勤務でも雇用ということをみてもおかしいし、現場における必要性からいったら同等であり、もう「ボランティア」という名目で募集することに限界があるのではないでしょうか。
だから今回の雇用保険法の改正で、「法に引っかからない、さらに悪い条件の雇用形態」を作り出すことになるのだと思います。
「なくてはならない」人材は、しっかりと「職員」として身分を保障し勤務していただくことが必要です。
平塚市は、法の改正の趣旨を生かし、雇用に切り替えるべき時期が来ていると思います。