10日、横浜の波止場会館で「食と都市農業を考えるシンポジウム」があり、参加してきました。
パネリストは、田代洋一氏(横浜国大名誉教授・大妻女子大教授)、安藤伸男氏(JA神奈川県中央会専務理事)、丸山義弘氏(神奈川県生活協同組合連合会専務理事)、紙智子氏(日本共産党農林・漁民局長、参議院議員)の4氏。
(マイクを握る田代氏、横が安藤氏、その横が丸山氏、そして紙氏)
4人のパネラーから、とても参考になる話が聞けました。
- 食の安全ももちろん大切だが、いま貧困による肥満が増えている。安くて栄養価の高い(カロリーの高い)ハンバーガーとコーラというようなアンバランスな食事による肥満は深刻であり、「肥満は緩慢な死」であるともいえる。
- 農業センサスがここで新たに発表された。それによると農業就業者の年齢は65歳を越えた。農業の問題は、作る人の問題ではない。食べる側の問題であるということを認識しなくてはならない。ところが、日本の米の総量の2倍の食料が捨てられている。一向に進まない農業政策を、農水省はどう考えているのか、この政府に対する評価をする必要がある、とも語られました。
- 現在神奈川県内に320箇所の直売所がある。自国の食料は自国でまかなう・・・これが基本だ。外国で輸出禁止になったら日本人は生きていけない。体の6割は他国の食料で生きているのが日本人だ。
- 横浜を見ても、農地面積県内1、小松菜は県内1、全国で2位。カリフラワー県内1、全国で8位。どっこい神奈川の農業は頑張っている。
- 都市計画に農業を制度的に位置づけることが必要。都市農業も、農地として使用していたら農地課税にするべき。しかし、今はゾーニングでやられている。
- 県内の農業収入は750億円、まだまだ少ないが、環境や景観、災害などさまざまな効果を考えたらこれに3.2倍の評価があっていい。それだけに、都市農業は、都市に必要なもの。
- 生産者だけでは農業は守れない。行政も市民も含めてやっていくことが重要。
- 今の農政を継続するだけでは衰退の一途である。国の最重要課題として位置づけ、早急に自給力を強化し、次世代に継承する必要がある。
会場からも、質問や意見が次々と出されました。
● 神奈川では10億円台になる相続税の人もいる。農業生産だけでは払えない額を請求され、農地を切り売りするしかない。これでは農業はやっていけない。大和で3代続けている農家の参加者も17年前に、億単位の課税をされたと報告。納税法を変えないと農業はやっていけない。と悲痛な声が相次ぎました。
助言
課税猶予制度はある。(しかし、条件が大変厳しいものだという意見もあった)宅地課税を阻止する運動が大切。宅地並み課税や相続税は人口増加の中、都会で住みたいという人のために農業を都会から締め出すためのものだった。いま、人口減少が進む中、宅地化はもう必要なくなってきている。相続税で土地を吐き出させるやり方はもう通用しない。農地でやる限り、他人に貸した場合でも農地としての課税を守らせることが必要だ。環境問題から見ても、山林の課税も考え、山林をつぶさせないことも重要。
● 農産物の価格がどんどん安くされる。自由化の波はもろに来て、毎年100万円単位で収入が減っていく。
助言
価格の問題は、輸入自由化が大きな原因。また、大型スーパーによる買い叩き、これを直していくことが必要。
● 小田原の農業者からは、高齢で耕作放棄地が増えている。これを守るにはどうしたら良いのか。また、ハクビシンが出て、ようやく収穫だというときにやられてしまい、高齢者にとってやる気がなくなってしまう、との意見。
助言
鳥獣被害の根本を考えなくてはならない。しかも、被害の補償は被害にあった作物に対してだが、イノシシなどにやられるからあの畑には作らないと、放置している農地に対しての支援も必要だ。
● 政府は自給率を50%に上げるという。これからは休耕地に小麦・大豆を作らせる政策が必要ではないか。休耕地が復活しても、同じような作物を作っては、価格がさらに安くなってしまうだけ。
● 委託が多くなり、学校給食に調理員がいなくなってきている。子どもを育てていくには、地元がつくったものを地元で食べる。こうした教育が必要。農業体験をいれて、農業は簡単ではないということや、命の大切さを身に付ける教育が大切だ。
● 税の問題で、先進的に行われているところはないのか。
● やはり土地は財産である限り相応の課税は必要ではないのか。
● 共産党はいいことを言うが、実現までには時間がかかるのではないか。
といった意見も出ました。
紙参議院議員は、これまでも、共産党の議席は少なくても、提案し論戦する中で、いくつも大きな変化をつくってきた。みんなで運動していくことが重要だと述べました。
はたの君枝さんの司会進行で行われた今回のシンポは、大変意義深い内容でした。そして平塚の農業にも直結する問題であり、とても多くのことを示唆していました。
今回の参加者は230人。会場に入りきれない人も、廊下に椅子を並べて真剣に聞き入っていました。