9月議会に、市内の民主商工会婦人部から出されていた「所得税法第56条廃止の意見書を国に提出することについての請願書」は9月10日、総務経済常任委員会で審議されましたが、賛成者は7人中私ひとりという結果となりました。
これに反対した委員の討論は、全く請願の内容には触れず、「思いは十分理解したいが、政権も交代し、これが国民のためにならないということであれば、場合によっては見直しもあるかもしれない。国の動向を見守るべきということも含めて、この請願を不採択としたい。」というものでした。
「思いは十分わかる」「申告している人にとっては大変御苦労な部分もあろうかと思う」とまで言いながら、国が決めることというのです。請願は、何のためにあるのか、今の法や制度に対し、どうしても理不尽な部分が生じているからこそ見直してほしいという市民の願いに、「国が決めること」で済ませてしまっていいのでしょうか。
この「所得税法第56条」とは、どんなものか
皆さんに、是非知っていただきたいと思います。
所得税法第56条は、「配偶者とその家族が事業に従事したとき、家族従業員の働き分は必要経費に算入しない」 としており、中小・零細業者の家族従業員の働き分・労賃として事業主の所得から控除される額は、配偶者で86万円、その他の家族では50万円だけです。これでは家族従業員の社会的地位も人権も認められていません。そのうえ、事業主は、当たり前の経費が控除できず、大きな負担になり、後継者不足に拍車をかけているのです。
アメリカやイギリス、フランス、ドイツなど世界の主要国では、業者2世や配偶者に支払う対価は、必要経費として控除が認められています。日本の「所得税法56条」は戦前の封建的な家族制度の名残であるといわれています。
日本で申告納税制度が始まったとき、帳簿をつけて税の申告をする事を義務付けるために、青色申告書で申告したら、家族の給与も控除するとしたのです。(所得税法第57条)
しかし、それからすでに50年余が経過し、納税者に充分定着していること、そして戦後生まれが大半を占めるようになり、家族関係も大きく変化し、納税者意識も大幅に変化してきました。そうした中で、個人事業者の所得計算において、「親族が事業から受ける対価の必要経費の算入を認めない」とする56条の規定に対し、法の専門家も疑問を投げかけています。
「青色申告に特典」は時代ハズレ
また、昭和60年から白色申告者にも帳簿の記帳義務制度が施行され、一定の要件に該当する白色申告者には記帳義務が課せられました。さらに消費税が導入され、帳簿の備え付けがなければ仕入控除ができないことなどから、専従者給与の規定を、従来の青色申告の特典として位置づけておくことが妥当かどうかという疑問も出されており、所得税法第56条で、青色・白色と区別すること自体が、時代にそぐわなくなってきているのです。
全商連青年部協議会が一昨年行った「全国業者青年実態調査」でも、業者二世の6割以上が事業継承を望んでおり、事業の担い手である青年の働き分を正当に認めてほしいという声が多数上がったといいます。
市内の中小・零細業者の皆さんや、その家族が安心して家業を継続していくためにも、家族従事者の賃金の経費算入を認め、それを妨げている所得税法第56条の廃止を求める要求は切実な問題です。全国でも、15税理士会のうち9税理士会が廃止を求めており、全国各地の自治体で廃止を求める意見書が採択されてきているところです。
平塚市議会では、共産党、市民派の会、神奈川ネット、江口議員が採択すべきとし、私が共産党議員団を代表し採択すべきと討論を行いましたが、反対多数のため不採択とされてしまいました。今後も根強く運動していってほしいし、私たちも力を尽くしたいと思います。
法はまんべんなく降り注ぐ太陽であってほしいもの。
赤みを帯びてきたほうき草