11月10日、湘南地方市議会議長会(藤沢市、鎌倉市、茅ヶ崎市、平塚市、小田原市、南足柄市の6市で構成)の「議員研修会」が藤沢市湘南台文化センターで開催され、平塚市議会として議員団3人も出席してきました。
そこで松本市の菅谷(すげのや)昭市長による「原子力災害における放射線被曝の長期的課題」についての講演を聞いてきました。
菅谷市長はかつて外科医として、1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の医療支援活動を行ってきた経歴の持ち主。
1991年からチェルノブイリに7回もの医療支援に行ってきた後、1996年からは5年半という長期間ベラルーシ共和国の国立甲状腺がんセンターで小児甲状腺がんの外科治療や指導に従事されてきました。
今回、東京電力福島第一原発による事故がどういう危険性をはらんでいるか、政府の対応の遅さ、甘さ、将来起こり得る問題について資料を紹介しながら語られ、私はかたずをのんで聞き入りました。
この写真は事故が起きてから10年たったチェルノブイリの周辺測定結果(汚染地図)です。
一番南にある、事故が起こったチェルノブイリ30Km圏内では超高濃度の1480K㏃以上、400Km離れた地点でも高濃度の185~555K㏃のセシウム137が 測定されています。
居住禁止区域基準 1480K㏃以上、 警戒管理区域 555~1480K㏃、 汚染地域 37~555k㏃
これは、1986年(原発事故)からの小児甲状腺がん発生の推移です。10年後がピークとなっています。
松本市長:菅谷昭氏
ポーランド政府の対応
ポーランド政府はこの事故が発生した翌27日の夜、自国大気中に異常な放射性ヨードが確認され、特に北東部で高濃度。28日には24時間非常事態体制を発動。その後タス通信からチェルノブイリの原発事故を知ったと言います。(自宅待機など避難させられた国民も何があったのかわからない状況だった。)
29日には、中央薬剤協会にKI(ヨードカリ)溶液剤の準備を指示し、午後3時:薬剤の配布を指示。全ての病院、保健所、学校、幼稚園を通して入手できるようにした。
(投与量)新生児:15mg、5歳児までの小児:50mg、6歳から大人:70mg
特に、妊娠・授乳中の女性には、強制的ではないが内服するよう指示。
5月2日までに1千万人以上の子ども(小児人口の90%以上)と7百万人の成人(人口の25%)が内服したといいます。
また、乳牛に新鮮な牧草を与えることを全国的に禁止。
1,000Bq 以上の汚染ミルクを子どもと妊娠・授乳中の女性が飲むことを禁止。
4歳以下の子どもには原則として粉ミルクを飲ませる。
(不足の粉ミルクはオランダより緊急輸入)
子どもや妊娠・授乳中の女性はできるだけ新鮮な葉菜類の摂取を控えるよう指示。
こうしたポーランドの素早い対応。
日本では・・・
●「牧草を与えないように」と言われたが、「稲わらとは言われなかった」・・
なんでいけないのかという丁寧な指導がなかったということ。
●人が住めない地
確かな情報を伝えれば、新たな生活設計ができるのに、あいまいにしている。
●今後のホットスポット
海、下水処理場、用水路、沼、川底・・
●低濃度汚染地区では何が起こるか・・
戻りたいという住民に対する政府のあいまいな対応。
講義を聞いて
そこに住めなくされる住民の思いを考えると、胸が苦しくなる。しかし、住民の命を預かる政府が、こうした非常事態にあいまいな態度をとり続けることは、将来大きな負の結果を生み、結局は国民の悲劇と負担を拡大することになる。
被害を受けた住民の方々に将来にわたり、手厚い補償をすること。そして、こうした恐ろしい結果を作った原発依存を改め、二度と繰り返さないことではないか。
とても重い内容でした。日本ではノーベル化学賞・物理学賞・生理学・医学賞に輝く学者を次々生んでいるにもかかわらず、政府の対応の甘さは科学の進歩とは程遠く、人間として「怒り」がこみあげてきました。