アガパンサス
加藤 桝治
今年も我が家の庭にアガパンサスが沢山咲きだしました。長い花径の先に薄紫の花が放射状にいくつも咲く様は、梅雨のうっとうしさをはねかえすような爽やかさを感じさせます。
手入れは妻で、私は花の数を数えて楽しみます。
去年は百本を超えて咲きましたが、今年は古株を整理したり、株分けしたので少なくなりましが、六~七〇本が咲いて目を楽しませてくれています。
株分けした何株かは、平塚診療所の花壇に植え、いくつかが可憐な花をつけています。所内展示の絵手紙にもアガパンサスが描かれています。
我が家のアガパンサスは、妻の父が花卉栽培をしていて、六十年ほど前から作っていたそうです。結婚した時に持ってきて以後、我が家の庭をにぎわせています。 そのころは珍しい花だったので近所や知り合いに株分けして喜ばれてきました。戦前、戦争に反対して投獄されたことのあるSおばあさんに持って行ったところ、沢山咲かせて近所に株分けしていたそうです。花の名前が難しく覚えられないといって、「加藤さんの花」といって渡しているとのことでした。
二十五年ほど前、私が入院して後になって知らされた親戚などから怒られたことがありました。そんな時、家族新聞の存在を知り、疎遠になっている親戚や友人に近況を知らせるため家族新聞を発行することにしました。題名を、『アガパンサス』としました。以後十三年間発行してきました。「『アガパンサス』って何のこと」に答えて、「花」の名であることと、希望すればと、株をわけてきました。
最近では梅雨時になるとどこででも目に付くようになりました。名前も知られるようになったようです。
先日藤沢の友人、江成兵衛さんから、「最近つくったものです、聴いてくれませんか」と一枚のCDを渡されました。お互い次の用事を気にしていたので、話もせずに別れてしまいました。
CDの歌詞を見ると、「アガパンサスの花のように」とあり、作詞 江成兵衛、作曲 吉川敏男とありました。歌詞を読んで驚きました。戦争反対、平和の為の署名を訴えるものでした。
1番を紹介します。
1、梅雨の晴れ間に咲いた アガパンサスの花を
青い花火のようねと言いながら
あなたは そう その花のように
背すじを伸ばしてためらわずにドアを叩く
どうぞ署名をしてください
この国を再び 戦争をする国にしないために
歌詞は3番までありますが省略し
ます。作者は梅雨の中に咲くアガパンサスの爽やかさと、清々しく凛とした姿に今の世相を反映させ、「戦争反対、憲法守れ」の願いを託し、行動を呼びかけています。広く歌われることを願っています。 (2015年7月号)